30.フローズン・イン・タイム
牝ライオンが近づいてくるにつれ、アレックスは自分がその場に釘付けになっていることに気づいた。
その宙ぶらりんの瞬間、まるで時間という布が薄く伸びたかのように、混沌を貫く明晰な知覚が彼にもたらされた。
その雌ライオンの接近は、かつては威嚇的な前進と受け止められていたが、今では痛切な自暴自棄の行動であることが明らかになった。
アレックスが彼女の視線を受け止めると、共感の波が押し寄せ、ふたりを結びつける絆が深まり、人間と獣の間に共有される本質的なつながりが再確認された。